ボット化するわたしたち

インターネットの特徴のひとつは、人間とロボットが一緒に生活しているということだ。文字を介してコミュニケーションする前提の世界では、文字を書いた人が誰かもわからないし、そもそも人間なのかもわからない(自動でテキストを生成しつづける機械かもしれない)。そんな人間とロボットが混在する世界で(人間でもロボットでもどっちでもいいじゃんという価値観のなかで)、これまでロボットが人間を再現してきたように、人間がロボットの真似をすることも多くなってきたように思う。

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@_gasyadokuro さんは僕が働いている会社の先輩だけど、夜にこんなツイートをする。

このツイートの内容自体はまあそういうことかという感じ(よくあるツイート)だけど、問題はこのツイートと同じツイートが不定期に何度も投稿されていることにある。

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平日の昼間とかもあるし…。というか、ほとんど業務時間中なのではないか。どういう意図なのか同じ会社だから聞けばいいと思うんだけど、聞いたらいけないような気がする。ふざけてるならいいけど、もし人間じゃなかったら…。

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同じように、知り合いの現代美術作家の @michaan さんも、「登山」というだけのツイートを以前から頻繁に投稿している。

僕は @michaan さんの職場を知っているので、この「登山」というのは「山みたいに自然が豊かな職場に出勤」しているのかなと解釈しているけど、本当は違うのかもしれないし、意味がないのかもしれない。しかし、もしこの「登山」が出勤を意味していたとして、出勤したら Twitter に投稿するというルールに沿って行動しているなら、この @michaan さんがロボットであるということも言えないことはないのではないか、と考えるようになった。ロボットをあるアルゴリズムのもとに一定の行動を繰り返す存在だとするなら、会社員として働く僕たちはロボットと何が違うんだろう。

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現代美術作家・小学校教員の @yuuuuuuuuuuuuuu さんという人も、以下のようなツイートを繰り返している。

これはフレームワークである。つまり◎◎前という駅名で、プラットフォームが地下にあればこのツイートができるのだ。

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@saeko さんは、IFTTT というウェブサービスを利用して、いつからか Twitter を退会するときのためのページの URL を1日に2〜3回のペースでツイートするようになった。どうしてそういうことをしているのかわからないけど、たまにタイムラインで見かけて短縮 URL をクリックすると Twitter を退会するページを表示させられるのはすごくエキサイティングな体験だと思う。

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人間がロボットに近づいている事例の先駆けとしては、@youpy さんの「新しいMacBook Airすごい」が挙げられると思う。URL をクリックすると IFTTT のレシピのページが表示されて、Add ボタンをクリックすることで自分の Twitter アカウントでも定期的に「新しいMacBook Airすごい」とツイートできるようになる。ウイルスに感染するように、ワンクリックで、自分もロボットに近づくことができる。

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こういった事例に触れるたびに、僕もロボットになってみたいという気持ちが強くなっていき、いろいろ試行錯誤した結果「家中の照明が点灯し暖房(夏場は冷房)がつけっぱなしのまま布団で気絶してた」という言葉に落ち着いた。2015年2月12日から毎朝7時にツイートするように IFTTT で設定していて、ロボットになりはじめた当初は会社で「電気代大丈夫?」と心配されることもあったけど、いまでは誰からもなにも言われなくなり、この調子ですこしずつロボットの投稿を増やしていって、いつか誰も知らないあいだに bot にすりかわっていられたらかっこいいと思う。

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最後に、ウェブデザイナー萩原俊矢さん のツイートを引用させていただきたいと思います。