撮り続けること、並べること

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フライドポテト記録」は、会社の先輩の @moha_ariyoshi さんが、フライドポテトを食べるたびに撮影している写真を記録した Tumblr。ファーストフード店や居酒屋など、撮影した店の名前も併記されている。白い紙ナプキンの上にフライドポテトが載っている写真が基本だけど、皿の上や手に持っている場合もあり、背景にうつりこんだ食卓や指のマニキュアから、フライドポテトがある風景とか、フライドポテトを食べる @moha_ariyoshi さん自身も同時に記録されている。

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大日本タイポ組合塚田哲也さんの Instagram では、ときおり電車やバスの座席カバーの柄を接写した写真が投稿される。柄のかわいさも楽しいけど、いつもあたりまえに乗っている電車の座席カバーがこんなにも多彩なデザインだったのかということに驚く。

フライドポテトも座席カバーも、日常生活のなかで繰り返し接するモチーフだ。だからつい、どれも同じものとして扱ってしまう。でも、そのディテールはよく見ると繰り返すことのない多彩さを持っている。同じモチーフの写真を撮り続けること、撮った写真を並べて見返すことで、見えるようになるものがある。

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…と思って、僕も #pancakesculpture っていう、ホットケーキを焼いて同じ構図で写真を撮るっていうハッシュタグを作ってみました。焼いたホットケーキが彫刻なんだっていう考え方は、谷口暁彦 さんの酒を飲みながらそこらへんにある日用品を組み合わせて彫刻だと見立てる 飲み会彫刻 から影響を受けました。

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#きょうの太子楼」は、kssk さんが、近所の中華料理屋の軒先にある看板のマスターが手書きで書いた文字を撮影した写真につけているハッシュタグ。かっこいいのはともかく、同じ文字でも日によってかたちが変わったり、時間が経過して文字がこすれて消えていくように見えるのは、Semitransparent Design の tFont のような時間軸を持った書体に見えてくる。先日のコミティアでは、まとめられた本 が頒布されていたらしいです…!(めっちゃ読みたい…!)このプロジェクトのほかにも、駅などの公共空間で公式のサインシステムが機能せず勝手に掲示された手作りのサインをまとめた 野良サイン #norasign も、すばらしいです。

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One Day One Icon」は、アイコンアイドルさんという方が、2011年12月から自分で自分を撮影した写真をアップロードし続けている TumblrTumblr 以前には Twitter で毎日アイコンを変えて公開していました。2012年の1月には、年末に誰でもアップロードできるフォームから投稿されたファイルを zip ファイルに圧縮して正月に配布する「ゴミ福袋」で有名な、インターネットレーベルのつくしレコーズから アイコン画像が100枚入った zip ファイル がリリースされ、現在は「あなたの部屋にいこるが居る」という、部屋の合鍵を借りて住人がいないあいだに自撮り写真を撮影する、派生したプロジェクトも行っているそうです。

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高木みゆ」は、高木みゆさんが自分が写った写真をアップロードしている TumblrVICE に取材されたときのインタビュー を読むと、「とにかくハタチになるのが怖かった」ので、「ハタチになる100日前から1日1本フィルムを撮ろうと決めて。その中から1日1枚を選び出し」た写真のようで、写真に記録されている日付も3年前だということは理解しながらも、定期的に Tumblr へ写真がアップロードされて更新が通知されるたびに、リアルタイムに高木みゆさんの姿を見るような感覚があります。インターネットの写真には、シャッターを切った時間とアップロードした時間という、ふたつの撮影日時があるのかもしれない。